第19回『怪力乱神ヲ語ラズ』関係者紹介 三十三人目【ヤマダ】
劇団員の室田です。
劇団肋骨蜜柑同好会『怪力乱神ヲ語ラズ』本日初日です。
普段からあまり口数が多いタイプではないのですが、本番直前になると尚更喋ることが減っていきます。
このもの語りがどのように本番で立ち上がり、そして観ていただいたお客様ひとりひとりに、どのように伝わり、感じていただけるのか、想像するとどうにもソワソワワクワクとしてきます。
関係者紹介も残すところ、あと二人。
今回僕が紹介するは、劇団肋骨蜜柑同好会の最古参、かつ主宰フジタのベストパートナー(とわたしは思っている)、『ヤマダ』さんです。
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【名前(ふりがな)】
山田 拓貴(やまだ ひろき)
【所属】
劇団肋骨蜜柑同好会
【過去の出演作品or関わった作品】
劇団肋骨蜜柑同好会のだいたいの公演に名前がある
ように見えて、意外にもそうでもない
という噂がある
【「怪力乱神割」の怪しい人、力ある人、乱れた人、神なら自分は何だと思いますか?】
力ある人(虚)
むかし、本当にむかし、まだ小学校の低学年とかのころの、おぼろげな記憶。
クラスで一番背が高かった私が、クラスで一番小柄だった女の子を、何のきっかけかで、押しのけたとか払い除けたとか、とにかくそれで怪我をさせ。
後日その子の家(地元の地主の大きなお宅でした)まで、菓子折りを持った母親と謝罪しに行ったことがあります。
自分としては他愛無く思えたその行動が、たやすく大ごとになる…という結果は、子ども心に強く印象づけられ。
以来、『自分は容易に他人を傷つける力を持っている存在だ』…という気持ちは、そんなものとうに持ち合わせない今に至るまでずっと、ずっと人生のバックボーンにある気がします。
…というお話です。
【あなたにとっての呪いとはなんですか?】
自分が歩いてきたこの道すべて
“人は結局、過去の集合体である”、とはどこかの王女様の言だったと思うのですが。
自分が今この場所に存在するということ、それはつまり、そこにたどり着くまでの過程で、常に誰かを押しのけ傷つけながら進んできたことに他ならない、と思うことがあります。
極端な話、例えば自分がいま呼吸をしたこと、それはつまり誰かの空気をいま自分が奪っているんだよな…なんて感じたり。
もちろんそのレベルの罪をぜんぶ引き受けていたらやっていられない訳で、結局は開き直って生きていくしかないのだ、と思ったのはいつのことだったか。
ともあれ今日この場所に自分が居ること、そこまでに積み重ねてきたすべてをずっと抱えながら、今日も前を向いて歩いていくしかないのだと、そう思っています。
【何かメッセージ】
たぶん今、左の上の奥の歯のあたりに虫歯がある気がしてます(痛い)。
虫歯も結局、歯磨きを疎かにした過去の自分の報いですね。
甘んじて日々、この痛みを受け入れて過ごしてます。
歯医者行かなきゃ、いけませんね。
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これらの解答を見るだけで、いかにヤマダさんが肋骨の劇団員として深く関わってきたかがわかります。
自分が生きてきたここまで全てを呪いと捉えるのも、人間の存在論を柱とする肋骨蜜柑らしい考え方です。
人はどれだけ普通に、正しく生きているつもりでも、知らぬ間に他人あるいは自分を傷つけ傷つけられ、呪い呪われている生き物であると、僕自身も思います。
子供のころの無邪気さ無自覚さしかり、大人になってからもそれは変わりません。
振り返ってみれば、劇団肋骨蜜柑同好会は、今回に限らず一貫して、そんな人間の呪いを書き続けているようにも思います。
ヤマダさんとは、正直に言うと、僕は劇団員としてそれほど絡みがあるわけではありません。
ただ、会った回数は少なくとも、選び取る言葉や思考から、かなり聡明な方だという印象が強くあります。
そして、フジタが呑みの場などで劇団の話になった際、初期肋骨の時にはヤマダさんが作品や劇団のことを一番相談できる相手であったということを、度々口にしています。
筑波大学の演劇サークル、ソニックブームから始まり、旗揚げから15年の歳月が経ったこの劇団。
途中加入の自分からすれば、知るよしもない絆や関係性が多々あります。
皆が築いてくれた絆のおかげで、自分が好きな演劇と出会い、今こうして舞台に立てているのだということを、しっかり実感しつつ、ヤマダさんの分までという偉そうですが、それも背負う気概で、本番に挑みます。

