恋文
居たたまれなくなってこれを書いています。突然ごめんなさい。愛、ということについて考える日々でした。私はあなたを愛したい、あなたのことを知りたいと願い、常にそうするために、あなたをきちんとこの二本の足で愛するために私はこの二時間二ヶ月二千億二十七年を費やしてきたのです。今、ここで、他ならぬあなたに逢うために。私はポンコツです。私は無能です。なに一つ、人並みにできない男です。私は人間として生まれたのに、人間であることにあまりに不器用で、それ故に私は、あなたのために小さくて精巧でおしゃれで頑丈な一粒の物語を作ってあげることができません。できませんでした。いつだって、挑戦してきたのです、私は。あなたのために、うまくできた贈り物を、私だっていつも作ってあげたかった。だけど私が作るものは、いつだってでき損ないのパンケーキのように、歪で、丸焦げで、生焼けで、たぶん、砂糖と塩を間違えていて、だから苦しょっぱくてパサパサでデロデロで、とても食えたもんじゃないとお怒りになったあなたは今すぐゴミ箱にそれをお捨てになるかもしれません。いえ、違います。あなたを責めようという意図は微塵もないのです。そして、この言い訳めいたお手紙によって、ますますあなたのお気持ちがここから離れていくような思いもして、心苦しいのですけれど、どうか許してください。違うのです。私は言い訳をしたいのではないのです。ただ、私はひと言、あなたにお伝えしたかったのです。私はあなたを、愛しています。愛していますあなたを。こんなバカみたいなことは、月並みで平凡で三流の人間が言うことですが、でも、それでもいい。私は月並みで平凡で三流の人間です。愛しているからなんだ、金でも呉れるのか、と、あなたはおっしゃるかもしれません。こんなものを作り、あまつさえ木戸銭をいただいて、恐縮に思っています。ごめんなさい。すみません。いえ、違います。断じて違います。割に合わないものを拵えたつもりは毛頭ございません。私は、私のこの、バロックで悪趣味な黒パンケーキが、なんの衒いもなくただ好きなのです。面白いと思っています。悪食なのかもしれません。悪食なのかもしれませんが、少なくとも私は、あなたに、喜んでいただけると思って、喜んでいただけるように、一生懸命考えました。これはその結果です。愛するとは与えること。怒濤に飛び込むように、あなたに贈ります。怒濤に飛び込むのに恋文を書くやつがあるかと言われれば、全くそのとおりで反論の余地もないのですが、ああ、やはり私は言い訳をしているのかもしれない。いや、しかしそれでも私は、この、これを、これからはじまる、この、これを、私のためではなく(それはもう微塵も私のためではなく)、他ならぬあなたのために、捧げます。神様。